シマフクロウとは

シマフクロウの現状

 シマフクロウは、以前は北海道全域に生息しており、1882年には函館で捕獲されている。その後、急速な開発の波に押され、数を減らし、今では国の天然記念物、日本版レッドデータブックで絶滅危惧種IAランクに指定されている。シマフクロウは現在北海道内に約140羽が生息、これは25年間で約2倍になったものであるが、まだ絶滅の危機から脱してはいない。

 道内では道東が中心に生息しており、環境は地域によって異なるが、主食の魚類が多いということだけは、どの地域にも共通している。何らかの形で人との関わりがあり、自然に生きるシマフクロウはほとんどいない。体長は70cm前後、翼を広げると180cmを越える個体もある。体重は雌で3.5~4.5kg、雄は3~3.5kgもある。飛ぶ鳥としては重い方である。

 シマフクロウは道内で最も早く営巣に入る。通常は3月初旬から中旬に、大木の樹洞(じゅどう)に1個か2個産卵する。他の鳥のような巣は作らず、樹洞内に蓙(ござ)を作りそこに産卵する。樹洞内は温度変化が少なく湿度も適度に保たれており、早い時期に産卵できる理由の一つであろう。巣のほとんどは天井がなく雨、雪が入る。樹洞に固執するのは、シマフクロウは暖かい地方からの分布拡大でその生態が残っているためであろう。抱卵という行動を一つとっても、番いごとに違いが見られる。長時間巣をあけても孵化する場合もあるし、巣を離れずまじめに抱卵しても孵化するとは限らない。

 孵化した幼鳥は全身白色の羽毛に覆われており、体重は60gほどである。その後1週間で約2倍、4週間で22倍、巣立ちを行う8週目には30倍以上の2kgに達する。巣立ち当初の幼鳥は飛行することが出来ず、巣立ちというより巣から落ちると表現した方がぴったりである。巣を出た幼鳥は二度と巣に戻ることはなく自力で歩行し、適当な木を見つけてよじ登っていく。親鳥は啼いて幼鳥を誘導し安全な場所へと導いていく。この時期、幼鳥の運動量は多く、大量の餌を必要とすることから、親鳥は夜昼関係なくハンティングを行っている。

 親鳥が給餌する期間は番いによって異なり、8か月から最長で3年間。親と別れるのも10ヶ月から4年と、個体によって差がある。なぜこれほど差が生じるのは、その地域の餌の量、移動経路の有無及び森林の状態、さらに親鳥のテリトリー意識の強弱などが考えられる。このように番いまたは個体により差があり、シマフクロウの生態を一言で言い表すことは出来ず、番いごと個体ごとの生態と言わなければならない。おそらくシマフクロウはかなり進化したフクロウではないかと考えられる。

平成25年9月16日 「北海道シマフクロウの会」設立記念講演より抜粋
(講師 シマフクロウ保護・研究家 山本純郎氏)